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ラム・お知らせ

暮らす旅スタッフの京都に関するコラム、
お知らせや京都の催事・イベント情報など随時掲載していきます。

小宮理実さんの出版記念会

2019.04.17 |

小宮理実さんの出版記念会と、中山福太郎さんのお茶の稽古で、京都へ。

御所前の桜は満開でした。

今回の宿は御所西の京都平安ホテル。京都御苑を望むホテルはどれも造りがゆったりして落ちつけますが、美しい庭を眺めながら朝食がいただけるここは格別です。食後には庭の散策も楽しめます。部屋の窓からも見下ろせる池泉回遊式の庭は、アメリカの日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」が選ぶ 2018年日本庭園ランキングで5位にランクインしたそうです。1位は島根の足立美術館。2位が 桂離宮というからすごい。平安神宮や無鄰菴の庭で有名な7代目小川治兵衞が公家屋敷の庭として手がけたそうです。

荷物をおいてさっそく、丸太町のkitとセカンドスパイスに器を見に行きました。2店とも『京都 手仕事帖』など暮らし旅舎の本の取材で訪れてから、折にふれ覗いてますが、特にセカンドスパイスの中村さんは、新しい作家や美味しいお店の情報源です。

翌日は、フォーシーズンズ京都へ、小宮理実さんの初出版記念パーティーに出かけました。料理教室の皆さんやお付き合いのある食品関係の方々をはじめ、多くの方々が集い、大盛況でした。




京都 おにぎり事情

2019.04.09 |

桜に誘われ、戸外でお昼ごはんを楽しんだ方も多いはず。

いよいよピクニックの気持ちいい季節ですね。

賀茂川沿いの桜並木は絶好のお花見ポイント。(写真は小宮理実さんのブログから)

料理研究家の小宮理実さんも、ピクニックが大好き。料理教室の生徒さんとの桜ピクニックは、献立の組み立て方や盛り付けの練習も兼ねた、華やかお重ですが、その朝、思い立ってのピクニックは、なるべく簡単準備が吉。とりあえずおにぎりを握るそうです。

ところで、新刊の『福を呼ぶ 京都 食と暮らし暦』でも紹介したのですが、京都のおにぎりは俵形なんです。今はコンビニ用におにぎりマシンがつくる三角おにぎりの方が多く目につくようになってしまいましたが。

そんなお話を聞いていたら、見つけましたよ。俵形おにぎり。新幹線で京都に着いたら、そのまま近鉄名店街へ。「ハーベス 京都」に並んだおにぎりは、俵形! 手づくりです。ここでおにぎりとお惣菜を買って、景色のいい場所でピクニックも良いのでは。


ちなみに、鴨川とともに、ピクニックのおすすめスポットは御所。御苑内にある富小路休憩所には、菊マークの包装紙の照り焼きバーガーもあるんです。


リニューアルした中立売休憩所から、ハンバーガーも含めた軽食メニューがこちらに移りました。テニスコートの脇にあるので、テニスをする人たちを眺めながら、菊バーガー。デザートにはソフトクリーム。ああもうお腹いっぱいですね。

俵屋吉冨の菊歌仙はお土産にオススメですよ。

福を呼ぶ 京都 食と暮らし暦

2019.03.13 |

来たる3月下旬、暮らす旅舎が企画編集した本

福を呼ぶ 京都 食と暮らし暦』が発売されます。

料理教室やテレビ出演、雑誌の取材など日々活躍の場を広げる料理研究家・小宮理実さんの本です。

京都室町の生地問屋に生まれ育った小宮さんならではの京都の暮らしの楽しみかた、うまいもの、お楽しみ処などを織り交ぜ、

二十四節気の暦に沿った家庭料理や行事食をエッセイと写真でご紹介します。

また小宮さんのホームページでは一部レシピが掲載されてますので、ぜひご覧ください。

アマゾンで購入


小宮理実(こみや・りみ)

京都生まれ、京都育ちのおせち料理・行事食研究家。食材も時間も無駄にしない。ものの命は使い切る。つねは地味でもお祭、行事はきっちりと。祖母との暮らしで、京都ならではの暦を意識した食と暮らしを刷り込まれて育つ。現代の暮らしに、京都の知恵を生かす工夫を考案する日々。食育、企業の商品開発、テレビ・ラジオ・雑誌で活動中。会員制の料理教室「ふくちどり」主宰。


大晦日の夜に

2018.12.31 |

もう少し早くアップするつもりが、すでに大晦日。

この1年をふりかえれば、1月に福太郎さんにお茶を習うことにして、

月に一度京都に通うようになりました。

忘年会の一コマ。なんでも絵にする、ろうそくのあかり。

予習も復習も不十分な不肖の弟子ゆえ、先生には迷惑をかけてばかりですが、

12月なかばに忘年会があって、弟子たちが初めて顔をあわせる良い機会でした。

現在4組弟子グループがあり、それぞれの稽古の様子を訊ねると、

初めの掃除は共通ですが、あとはバラバラ。

おじぎや碁石の置きとりなどの筋トレがメインのチームもあれば、

古参の弟子チームは碁石は見た事がなく、ましてや中指を合わせて相手の動きについて行くダンスは

是非一度やってみたいそうで、あらためてユニークな福太朗さんの稽古に弟子一同感心しました。

 道具がないどころか、お茶を介さなくても、「茶の湯」の意味や感動をさぐる

福太朗さんならではのアプローチは、「お茶」の姿を剥き出しにするのかもしれません。

 

翌日は、午前中永観堂そばの吉田市蔵さん茶席にうかがい、午後は稽古に行きました。

掃除が終わって座る筋トレのあと、みかんがそれぞれの目の前に置かれました。

「みかんであると言葉で認識しないで、みかんを知らない子供が初めて目にした時の心で受け止めてみてください」

と福太朗さん。

赤味がかった黄色い丸い物体はみかん以外のものとして受け止めることは最早できませんが、

障子越しの光りのあたり方や、陰の落ち方、表面の凸凹など、普段は当然のものとしてよく見ることのないみかんを

たっぷりと観察している自分に気付きます。

次に出て来たのはクシャクシャにしたラップで、ゴジラに似ているとか、反射してキラキラと光る様子を眺めることになります。

 

この体験をあえてお茶に当てはめれば、出された道具を観賞する心構えともいえますが、

解説なしで芸術と向き合うように、結局は受け手の力量が問われるのだと思いました。


京都はお茶でできている』で生まれた縁ですが、どこまで広がっていくのかますます楽しみです。


あとわずかで新年ですが。みなさまいつもお付き合いいただきありがとうございます。

よいお年をお迎えください。


 

もみじの永観堂から鴨川へ

2018.11.21 |

永観堂のそばに暮らす茶人の月釜に初めて参加しました。せっかくだから紅葉見物もと早めに着くと、永観堂の門前はすでに黒山の人だかり。台風の影響から、今年の紅葉はもうひとつかもしれませんが、放生池越しに多宝塔を望む風景はさすが「もみじの永観堂」。みかえり阿弥陀にお詣りして、月釜へ向かいました。

 

亭主は、『京都はお茶でできている』で月釜情報を教えてくれた吉田市蔵さん。勤めをもちながらも、長年朝活で大徳寺や法然院、平安神宮等で開かれる月釜に参加されてきた方です。この春定年退職されたあと、自宅茶の間に炉を切り、念願だった茶人の暮らしを始めたのです。

 

毎月1週間ほど開く月釜には毎月100人近い来客を迎えるとか。当日10時半の席にはお客様は6人。その中でおふたりは暮らす旅舎の本の取材でお世話になった方でした。栖鶴居は、元は八百屋さんで吉田さんが生まれ育った家です。店の部分を待合として、山水の襖絵を路地の景色にみたて、茶室へ入ります。

 

虫食い跡が味のある炉縁や、庵の名とした「栖鶴」の扁額も、自ら古材フェチと話す吉田さんの発見物。学生時代にはじめたという藪ノ内流の点前で、裏千家の点前との違いを聞きながら、美味しく二服いただきました。道具を拝見したのち、参加客に配られたのは紙と筆記用具。軸の解説が始まります。

 

           大綱(だいこう)
紅葉乃比(ころ)栂尾尓天(にて)
都人たかおたかおと のぼるかな
とがの尾山乃 秋を知らねば

 

吉田さんによれば、軸は江戸後期の大徳寺の大綱宗彦(そうげん)の詠草(歌を書いた紙)で、歌人として知られ、茶の湯のたしなまれた禅僧だそうです。

「京都で一番の紅葉の名所は高雄神護寺。でももう少し足を延ばしたらもっと美しい栂尾高山寺があると大綱和尚は歌に詠んだ」と教えてくれました。

素人には軸は何が書かれているかたいていわからず、その場で説明を受けても、たいがい忘れてしまう。吉田さんは自身の経験から、軸を写真にとって、読み方と意味をメモしてもらえば、ずっと理解が深まり楽しみも増すと考えたそうです。

 

帰り際、愛用の茶箱をみせていただき、次の機会を楽しみに別れを告げました。次に向かったのは平安神宮に近い、現代アートのMORI-YUギャラリー。白夜の光を描いたようなミニマルな風景画が素敵な小栁仁志さんの個展をのぞきました。作品は以前から知っていましたが、小栁さんに会うのは初めてでした。

 

昼食後は、建仁寺両足院の「京焼今展2018六根清浄」へ。今回は陶磁と植物がテーマで、盆栽研究科家の植栽家川﨑仁美さんのトークイベントが聞けました。盆栽鉢の役割と重要性をうかがいましたが、松を大胆に描き、盆栽の紋をいれた川﨑さんの着物姿も素敵でした。陶芸家かのうたかおさんの作品も見応えありました。

 

 


して仕上げは京都下鴨にある川口美術。開業25周年を迎え今年、毎回力の入った展示を企画されています。この日は25周年記念茶器展Part2杉本貞光茶器展を開催していました。信楽に窯をもつ杉本さんは、信楽、伊賀、楽、高麗、美濃と桃山文化の茶陶に学び、わびさびを追及されてきた茶陶人です。翌日の最終日は、三井別邸の茶室で、中山福太朗が亭主を務める茶会開かれたのですが、参加できず残念。店を出ると、鴨川はもう夕景色でした。

 

川口美術では、12月1日から『京都はお茶でできている』で紹介した市川孝さんの茶車展が開催されます。

 


撮影/田中幹人 

山崎か大山崎か

2018.06.20 |

一昨日近畿地方の地震があり、被災された皆さまには心からお見舞い申し上げます。

震源地に近い大山崎には先日訪れたばかり。待庵にも被害があったとニュースで知りました。

 

今回の京都では、三条木屋町にある大好きな韓国料理店「しるら」のお別れ会に参加しました。長岡京で6年、ここで19年。おいしい料理と温かいサービスにぞっこんの皆さんが集ったアットホームな会でした。近く山科で再開するとのこと。楽しみです。

  妙喜庵


さて翌日は京都駅からJR京都線で15分。山崎駅に降り立つと、左手すぐに国宝の茶室、待庵がある妙喜庵があります。とはいえ見学するには事前に申し込みが必須。

 

駅前から無料送迎バスにのって、大山崎山荘美術館へ行きました。ウイリアム・モリス展が開催中で、チューダー・ゴシック様式の建物に、モリスの壁紙やテキスタイル、家具、書籍などがよく似合っています。

安藤忠雄設計の地下ミュージアムにモネなどの作品も見ましたが、これはちょっと作品数が物足りない感じでした。庭園散策はお勧めです。

大山崎山荘の庭園

 大山崎山荘のベランダからの眺め。正面のこんもりした男山に岩清水八幡宮がある

 

 ここは秀吉と光秀が対した山崎の合戦の地で、天下分け目の天王山の頂上へはあと40分ほど歩かねばなりません。くじけてしまい秀吉が本陣をおいた宝積寺に行きました。待庵は千利休がこの陣内に作り、のちに移築されたといわれています。建築史家の藤森照信さんは、利休が宝積寺にあった阿弥陀堂を利用したと推察していますね。

寺には本尊の十一面観音像のほか、閻魔大王と眷属の像や大黒様が拝見できます。閻魔大王らの像は、小野篁作とも伝えられているようですが。真偽は不明です。画像はホームページからご覧ください。

 

 山を下りて向かったのはサントリー山崎蒸溜所。アポなしでしたが、次回は必ず予約してくださいといわれつつ、山崎ウィスキー館に入場できました。有料の工場見学はホームページからの予約が必要です。連続テレビ小説『マッサン』の効果なのかと思いましたが、ここも海外観光客が目立ちます。日本ウィスキーの評価が高まっている証拠かと思いました。

 試飲コーナーではめったに飲めない山崎25年物などをチャレンジ。もっともつまみがないので、持参するか、お土産コーナーで買う必要がありますが、広い庭を眺めながらの一杯は格別でした。

 

さてなぜJRが山崎駅で阪急線が大山崎駅なのか。アサヒビールが大山崎美術館で、サントリーが山崎蒸留所なのか。

その理由は帰りに寄った大山崎歴史資料館で判明しました。

山崎の戦は隣接する山城国乙訓郡大山崎と摂津国三島郡山崎で行われたそうで、古くから境はあいまいだったとかとかつまり京都府側が大山崎、大阪府側が山崎。アサヒビールとサントリーはその通りですが、JR山崎駅は両方にまたがっているようです。

 

アートをめぐる2日間

2018.05.24 |

3回目のお茶の稽古に、新たに暮らす旅舎のデザイン担当が加わりました。

彼女もつれあい同様、茶道教室バツイチです。

福太朗さんの稽古の話をしたら、ぜひ参加したいと。

『京都はお茶でできている』で紹介したお茶の楽しさを感じないままで

終わりにしたくないとのこと。

そのレポートは次回にすることにして、

今回は京都のアートを紹介します。

 

京都 手仕事帖』でも紹介した村瀬貴昭さんの新作展

Re:planter「再生」がギャラリーYDSで展示されています。

(5月27日まで)

LEDを仕込んだ大きな電球に植物を入れて楽しむ作品を

手がけてきた村瀬さんですが、

今回は、陶芸家が没にした器に、盆栽の失敗作を植え込む新機軸。

和室の一部に苔を敷き詰め、紅葉などの木を植え込んだ座敷に

破れた陶器から突き出した木々が印象的でした。

 東山駅近くの白川沿いにあるギャラリー16では、鈴木星亜さんの絵画展

「絵は私の身体を通して世界を見る」が5月26日まで開催されています。

西洋的な写実や透視法に縛られない星亜さんの独特の風景画を

この機会にぜひご覧いただきたいです。

 

また三条神宮道の角にあるギャラリーKUNST ARZTでは

小松加奈子さんの個展「ホームシック」が27日まで開催中。

福島を拠点とする小松さんの作品は風刺や毒の効いたインスタレーションや

ポップな作品が魅力です。

みかんせい 世界はまだ完成されていないまま

このほか、寺町通りのギャラリー啓「麻の型染め」ものぞきました。

涼しげな麻布は江戸から大正昭和のもの。現代の麻にはない涼しげな風合いが魅力です。

さらに白沙村荘、橋下関雪記念館の存古楼で開催している春秋遊会2018 へ。

日本画の諌山宝樹さんなど陶々舎で知り合った方々の作品が展示されていました。

27日までの開催で今週末にはみなさんの作品を使ったお茶会も開かれます。

駆け足ながら、さまざまなアートにふれた2日間でした。



盆略点前

2018.05.23 |

月イチの京都ですが、

コラム更新が遅れ、新緑の鞍馬寺も紹介しそこねました。

 

さて盆略点前は、お盆に茶碗、茶筌、茶杓、茶入れをのせ、

鉄瓶で湯を湧かし、茶を点てます。

柄杓を使わない分、作法が簡略なうえ、

炉と鉄瓶の代わりに魔法瓶でもできるので、

入門編として学びやすい点前だそうです。

とはいえその解説の任にはあらず。

興味のある方はYOUTUBEなどでご覧ください。

 

稽古はまず茶碗を選んで、中に濡らした茶巾を絞って畳んで入れ、

茶筌をセットすることから始まりました。

点てたときダマにならないように抹茶を濾してから茶入れに入れ、建水も準備。

炉と鉄瓶は福太朗さんが準備し、つれあいが亭主を務め点前が始まります。

 

ひと通りの流れの中で、挨拶や足の運び、座る位置から、

帛紗さばき、点前を福太朗さんがチェック。


常に体の中心(丹田)を軸にして、決して手先だけで動かさない。

すべての動きに動と静を意識する。

弓道部出身の福太朗さん。自然で美しい身体動作も茶道の魅力のひとつと話します。

 

茶人の点前はなぜ美しいのか。

逆にいえば美しく見える体の動きや作法を学ぶのが茶道の稽古。

頭では分かっても、お辞儀ひとつでも手が揃わず、自分の体なのに思うようには動きません。

「パートごとの割り稽古からやっていきましょう」と福太朗さん。お茶の道は遠いものです。

この日はさらに帛紗さばきの基本を教わり、

爽快な気分で2回目の稽古は終わりました。

まさに畳上のヨガやフィットネスです。

 

翌日は新緑を求めて、鞍馬山へ。ケーブルカーで楽して登り、帰りには門前の精進料理と牛若餅をいただきました。

「雍州路」の精進料理。生麩の木の芽煮が美味。

「神虎餅多聞堂」の名物よもぎのしんこ餅と牛若餅。


 

すべては丹田から?

2018.04.25 |

春の訪れが予想外の早さだった今年。3月末の京都はさまざまな桜が咲きほこっていました。

思いもかけず桜の季節に始まった私たちのお茶の稽古。1月に訪れたときは底冷えのした福太朗さんの住まいでしたが、ついています。

「なんのためにお茶を学びたいかまずは確認させてください。お茶会に参加するためとか、亭主ができるようになりたいとか」と福太朗さん。それぞれの目的や目標に合わせた稽古をするということです。

果たして自分に目標はあるでしょうか。

 連れ合いがお茶を習い始めたのは10数年前のこと。最初の先生は高齢のため教室を閉じることになり、次の先生のところでは「お仲間たち」と肌合いがあわず退会した経験があります。いつかまた習いたいと思いながらも、これと思う先生との出会いがなかったとか

 一方私のお茶は、読書少々の耳学問のみで稽古はまったくの初心者。見よう見まねで、お茶会に参加してきましたが、振る舞いには呆れられることも多かったはず。

 『京都はお茶でできている』の2年近い取材を通して、陶々舎のみなさんの創意工夫や、お茶を通じた集まりの楽しさが実感できて、茶道の窮屈なイメージが覆されたのです。もっとこの世界を覗いてみたい。そんな好奇心が弟子入り志願の理由で、具体的な目的はとくになしというのが正直な答えでした。

 とはいえ「やはり亭主とかやってみたいです」と答えた自分。

「ではまず盆略点前からやりましょう。その前にまず茶室の掃除をしていただきます」と福太朗さん。

 わたしたちの稽古は茶室の箒がけと雑巾がけから始まりました。連れ合いはいままで稽古で掃除したことはないそうで、草むしりや掃除が、客を迎える亭主の基本ということを、身をもって学ぶ機会となりました。

「掃除をすると、部屋のスケールを感じたり、畳の目を見たりできますよ」と福太朗先生。

 雑巾を絞りながら真冬じゃなくてよかったと思いつつ掃除を終えました。

「次は茶碗をそれぞれ選んで、抹茶を漉してください。終わったら棗に入れます。その次は茶巾の準備です」と先生。

 漉した抹茶を棗に入れますが、棗の蓋の深さまで、抹茶を山盛りにします。茶巾は水に濡らして絞って畳んで、茶碗の中に入れて茶筅も置き、茶杓を茶碗の縁にのせ、お盆に棗と茶碗をセットして、控えの間となる居間に運びました。

 いよいよ稽古本番。茶室に入ります。

「入り方は次の機会にして、今日はお辞儀をやりましょう。お辞儀にも真行草があります。まずは座ってください」

 ここで正座です。最近、正座は骨関節の動きはもちろん呼吸を整えるなど体にとてもよい座り方だと本で知って、お茶の稽古はヨガに通じると理解したばかりでした。多少足が痛いのも我慢、我慢。

「腰に蝶番があるように、頭の重みを感じてパタンと前に倒すだけです。手はその動きにつれて、自然に畳につきます。手のひらが畳に全部つくと真。第一関節で行、指先だけが草です」

 畳の縁から膝まで何目あけて座り、足の指や手の位置など、正座のお辞儀ひとつも、言葉にすると実にたくさんの手順があり、それぞれを意識してみると、手の揃え方ひとつ、簡単そうで難しい。言葉では到底覚えきれるものではありません。だから体が覚えるまで稽古が必要なんですね。

 高校時代は弓道をやっていた福太朗さんにとって、茶道の身体動作の面白さに惹かれたそうですが、確かにお茶をする身体の動きは美しく、お茶を習う目標のひとつなのかもしれません。というわけでガンバラネバ。

 ここでキーワード、「丹田」の登場です。全ての動作の中心となるのが、身体の重心である丹田です。常に丹田を意識することで、動きはゆっくりと優雅に行なえる。けして手先や足先で動いてはいけないということ。お茶のすべての作法もこの丹田から始まるのだそうです。

 正座とお辞儀の次は、立ち方、歩き方。丹田を意識して爪先を返してスッと立ちあがると、摺り足をホバークラフトのように少し浮かし、ささっと歩く。六畳の座敷をくるくると10数周もしたでしょうか。

 歩く、座る、立ち上がる。この日常動作こそ、お茶の亭主にとって作法の基本動作というわけです。

次回、「盆略点前」編に続きます。

茶のない「お茶」

2018.04.01 |

 「京都はお茶でできている」の出版から1年半。ついにお茶の稽古を始めることにしたのです。きっかけはお正月明けの京都。中山福太朗さんを新居に訪ねました。

大徳寺そばの陶々舎から同じ北区内の民家に移った福太朗さん。ガイセ・キキさんはチリに帰国。天江大陸さんは新しいメンバー2人とともに陶々舎を拠点に活動しています。3月に発売されたムック『お茶の京都』でもみなさんの活躍が紹介されています。

福太朗さんの新居は、土間に井戸がある農家の一角です。昨年6月に引っ越してから、柱梁や床を直すなど手を入れながら暮らしています。年明けに訪れた寒い朝。「台所の暖房はあきらめました」と福太朗さん。石油ストーブと火鉢で暖かな居間に通され、お茶を点てていただきました。「福ハ内」と書かれた菓子箱にはそら豆のような形の焼き菓子。

居間の隣は元仏間の床の間もある和室。奥の窓際には庭で朽ちかけていた水屋箪笥。もう少し手直しして台所で使うとのことです。陶々舎同様、ろうそくの灯で垂らされた畳には、炉を切り茶室として使えるようにしました。いまはここでお茶を教えているそうです。


半年ぶりのあれこれを話すうち、置碁をしましょうと福太朗さん。取り出された碁石を、白黒両方を掴みとって手元におきます。「順番にいくつでも、碁をおいていきます」古い床材を転用した低い卓子にばらばらと置かれる碁石。

「置き方でなんとなく人柄が知れたり、次々と変わっていく碁石の景色も面白いです」以前このコラムでも紹介した「置き花の茶会」にも通じる趣向です。抹茶がなくても「お茶」ができるのではと話す福太朗さん。パチリと置いたり、バラっと撒いたり、盤面の様子だけでなく音も楽しむ。その場に集中して、ひと時を過ごす「お茶」の時間。なるほどと思いました。

2日後新幹線に乗る前に、京都駅そばの崇神新町に寄りました。ここで陶々舎が釜をかけていると聞いたのです。崇神新町は京都駅から5分の街の一角に現れた、フードコートといえば近いでしょうか。好きなテーブルに座って好みの食事とお酒が楽しめるスタイルです。

福太朗さんや陶々舎新メンバーの三窪笑り子さんたちがお茶を振舞っていました。ワインにタパス、日本酒におでんを楽しんだあと、抹茶をいただきました。そのときです。楽しいお茶をこれからも追いかけるなら、福太朗さんに弟子入りするしかないと思い立ち、その場で志願したところ、心よく受け入れてくれました。 (次回は稽古の様子をお知らせします)

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