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火鉢のすすめ

2017.03.02 |

 本当のことを言うと、我が家に薪ストーブを設置することを、真剣に考えた時期もあったんです。薪をくべながら、暖をとったり、ストーブの上に鍋をのせて煮込み料理をしたり、ストーブの中にアルミホイルで包んだお芋を放り込んで焼き芋をこしらえたり……。楽しそう! 美味しそう! そういうのがかっこいい! 

 でも、今住んでいる家に、新たに薪ストーブを設置するのは、スペースや費用の面からも「無理だよね〜」ってことに落ち着いていました。

「火鉢なら置けるんじゃない?」ってことに気づいたのは、京都でさまざまな場所で楽しむお茶数寄たちの姿を見てから。彼らは、器ギャラリーの片隅で、鴨川のほとりで、ベランダで、お茶を点てます。彼らが心を砕くのは、「いかにしてお湯を沸かすか」。陶芸家のつくった大きな鉢に、灰と五徳を仕込んで「風炉」にしている人もいる。「あれいいなあ」「欲しいなあ」「どんな大きさだったらできるかなあ」と考えているうちに出会ったのが、冬の陶々舎での「火鉢」でした。

「火鉢だったら煙突いらない」「鉄びんがお似合い」「熱燗もお似合い」「それに、お茶もできる!」

 そんなこんなで、日本家屋でもない我が家に選んだのは、直径27センチほどの「手あぶり」でした。まずお正月にお餅を焼き、焼き網の大きさや五徳の高さを模索。焼き網が火鉢の縁にかかってしまうと、火鉢の縁が焼けてしまうのでした。炭や火熾しなどの「火鉢グッズ」をまとめる道具は、鎌倉の「ぎゃらりー伊砂」で手製の岡持(木製の蓋付きの手提げ箱)を。火鉢生活の先達として、お役立ち道具について伺いました。「換気に気をつけて」とは、いろんな人に言われましたが、今や不慣れな「火のある暮らし」に、先達の知恵を拝聴できるのは心強い。もっと早く訪ねればよかった。

 さて2月の末。火鉢どれどれ?とやってきた二人の友人。まずは鉄びんのお湯で淹れた京番茶で喉を湿らせ、湘南名物タタミイワシをあぶります。すかさずチロリで熱燗。ちょっといい気分になったところでブリしゃぶ。地元で採れた生わかめも忘れません。時々炭の調子を見てくれるのは、Oさん。「子どもの頃は、火鉢の番をしてたんだよねえ」「炭は風の通り道をつくってやりながら、中心を向かせて置くのがいいんだよ」。ここでも貴重な知恵の数々……。

 手土産の干し芋、干し柿もあぶりつつ、さて、いよいよお茶の出番です。

 

 再び鉄びんでお湯を沸かしている間に桜餅をいただき、見よう見まねで点てたお茶。白湯で締めたはずなのに、ウィスキーのお湯割に移った人もいる。

「そういえば、小さな鯛焼きもありました!」「みかんも焼いてみよう!」

 お腹はいっぱいなのに、不思議にあれもこれも焼いてみたくなる。お酒で酔ってはお茶で醒まし……。小さな火を囲んで、あれやこれや話は尽きず、いくらでも昼の宴は続きます。