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風景をつくる人

2017.04.14 |

絶景スポット」を探しては、旅をして写真を撮るのが若い人たちの間で流行りのようですね。

 美しい自然の風景には誰もが息を呑みます。不便で人の手が入りにくいところほど、美しい風景が残っているというのはちょっと皮肉な気がします。

 岐阜市の長良川下流にある川原町は、織田信長の時代からの商人町。ある夏、川原町界隈を岐阜提灯を持って歩く、というイベントがありました。当時の観光局長が「夏の宵に、提灯を下げてのんびり散歩する人たちがいる。そんな風景が戻るといいな」とつぶやいたのが印象的でした。

 素敵な風景、これがなかったらいいなの風景、こいつのせいで台無しだ! の風景……。町を歩いては目に入る風景を勝手に評価していましたが、自分の存在も風景をつくる要素になるんだ、ということに改めて気付いたのです。

 3月にイオンモールKYOTO店内で開かれた陶々舎のお茶会では、中山福太朗さんのお茶席が始まる前に、天江大陸さんが、MUJIのワゴンにお茶の道具を組み込んで、お茶をふるまっていました。

「このワゴン、いいでしょう。こんな風にして新幹線の通路を歩いてお茶ふるまえたら面白そうですね。オフィスの中で、こんなワゴンでお茶ふるまったりして」

 キリキリしたオフィスの中で、ひととき抹茶をいただくオフィスワーカー。なるほど。今までになかった新しくて楽しい風景が生まれるかもしれません。

 大陸さんは、釜を組み込んだ自転車で、鴨川べりで道行く人にお茶をふるまっています。小さなパラソルを広げた自転車で、のんびり話をしながら抹茶を点てる大陸さん。子供も外国人も、何してるの? いただいていいの?と興味津々に近寄ります。

 大徳寺そばの日本家屋をお茶の拠点にしようと考えたのも、若い人がお茶に興味を持ってくれたら、身の周りのものを見る目が変わって、床の間のある家に住んでみたくなるかもしれない。荒れ果てた町家に住もうという人ができるかもしれない、と思ってのこと。彼の頭の中には、あちこちで、いろんなシチュエーションで、思い思いにお茶を楽しむ風景が見えるのかもしれません。美しくて楽しい風景に反応していくうちに、我が身もそんな風景をつくる一員になれることに気づくのです。

 さて、鴨川(賀茂川)のお茶風景は大陸さんだけではありません。葵橋のたもとではもしかしたら為さんが、月夜の晩にはお煎茶をする人が、休日の朝早くには太極拳の後に中国茶でひと休みする人たちが。運が良ければ出会えるかもしれません。

 そんな景色が、あちこちで見られたら楽しいだろうな。