12月6日仏光寺のイチョウ

Posted by S.
12月6日 Posted by S.

京都御苑の紅葉

「今年の紅葉はもうひとつ」と、皆さんおっしゃいます。
例年よりも気温の下がるのが早く、木々が色づき始めた頃、なぜか季節が逆戻りして暖かくなり、葉っぱも迷ったのか、一部枯れたり落ちたり、色もくすんでしまったそうです。昨年に比べると確かにそんな印象を受けました。
それでも、11月の末に訪れた仏光寺の大銀杏は、黄色い葉が青空にたっぷりと映え、しかも地面は厚く絨毯を敷き詰めたようでした。

境内の一角には京都造形芸術大学の協力により昨年秋から、デザインストア「D&DEPARTMENT」があります。京都セレクトをテーマにした地域の伝統工芸品やロングライフデザインを中心に、ギャラリーや観光情報を集めたコーナーを展開しています。

この日は、ストア内の小上がりで、陶々舎のメンバーのキキさんがお茶を点ててくれました。木桶の椿、点前道具を収めたブリキの岡持ち、風炉にかかる錫の薬缶、壁の現代アートというしつらえで、織部の変形碗で薄茶をいただきました。ほんのりと甘みの残る一服のお茶は、冷えた室内にあって、心地よい温かみがからだに広がっていくようです。

暮らす旅舎では昨年秋、『水の都 京都』『京都 食手帖』『京都 手仕事帖』の三冊を出版しました。『京のろおじ』から始まったシリーズは、いわゆるガイドブックとは異なり、いずれも暮らすように京都を旅する楽しさを紹介してきました。

この秋、ようやく次回作の準備に入りました。テーマはお茶です。といっても茶道の本ではありません。茶の湯の文化を世界に紹介した岡倉天心の名著「茶の本」にあるように、お茶は日本人にとって総合芸術です。季節や自然を愛し、手仕事を尊び、もてなしを一心につくす、日本人の心を天心は記しました。

いうまでもなく茶の湯に登場する茶室、庭、掛けもの、花、茶道具、茶、茶懐石、菓子などそのすべてが京都で生み出された文化です。それらは日本人の暮らしの文化、すなわち生活芸術をつくりあげたのです。

いま京都では茶道という枠にとらわれずに、お茶を楽しむ人たちがいます。喫茶去とはどなたでも分けへだてなくお茶をふるまう茶人の心得ですが、今度の本では抹茶にかぎらず、そのほかの日本茶や中国茶までとりあげ、お茶のさまざまな魅力を伝えます。

さらにお茶のつくり手から、お茶の道具をつくる人や扱うお店、お茶を美味しくいただける料理店や甘み処、そしてお茶漬けにかかせない逸品まで「お茶を知れば、京都は一層楽しい」という視点で、京都の魅力を1冊にまとめます。

折々に、取材の様子なども紹介したいと思います。ご期待ください。