12月14日師走の京都

Posted by S.
12月14日 Posted by S.

 新緑の葵祭も、本来なら提灯行列で参加するはずの祇園祭もなく通り過ぎたこの夏の京都。先月初め再開した春以来のお茶の稽古は、風炉の季節をワープして、炉開きとなり「炉薄茶運び点前」の稽古をつけてもらいました。実は4月に一度、ZOOMを使ったリモート稽古をトライしましたが、襖や畳もない空間では限界があり、やはり亭主と客の身体、そして道具立てがあってこそのお茶と実感しました。
 12月のお茶の稽古は先月に続き「炉薄茶運び点前」。床に置かれた庭の熟れた柿が秋の終わりと冬の到来を告げています。いつもまっさらな状態の不肖の弟子を導いてくれる福太朗さんには、ただ感謝しかありません。自宅で畳に座る時間をもう少し増やさないと思った次第です。

左 - Node ホテルの最上階の部屋。ベッド上の写真は杉本博司。
右 - 京都の正絹組紐を使ったブレスレット

今回の宿泊は前回と同じ、アートなnodehotel。到着後のロビーで待ち合わせたのは、京都大学4回生の福田千恵子さん。
 昨年、京都の観光公害の解消を目指して「千恵の遺産」(https://chienoisan.com)という活動を始めた福田さん。暮らす旅舎の話を聞きたいとの連絡がありお会いしましたが、むしろ彼女の活動の面白さに惹かれ、後半はその話を伺いました。
 観光公害の最大の原因は、観光客と受け入れ側の認識不足にあり、問題の多くはお互いの文化を知ることで解決できるはず。旅先ではお土産の前に、自分がその土地をよく知るためのものを買うことが、交流の初めの一歩になるのでは、という話は納得できるものでした。
 そのためのツールとして福田さんが考案したのが「千恵の遺産の証」。京都の伝統工芸である組紐で作ったブレスレットを、互いの敬意と寄り添う証として広めているそうです。また今後は食の分野などに展開を広げたいと話してくれました。
 今年は思ってもみなかった形で、観光客は激減してしまいましたが、コロナ収束後の将来を見据えて、福田さんの活動に目が離せません。

左 - 紅葉の名所として名高い東福寺の庭。
右 - 東福寺本坊庭園は重森三玲作。苔の築山は京都五山を表すという。
下 - 北野天満宮の御土居の紅葉。

 三日間の滞在中、今期最後の紅葉を高台寺、東福寺、北野天満宮と観てまわりました。昨年までの混雑を思いおこせば、どこもゆったり。1週間前が紅葉のピークということでしたが、盛りを過ぎたとはいえ、目に眩いほどの色の洪水でした。かつてはあまりの混雑に、「花も紅葉もなくても京都は愉しい」と『京のろおじ』や『水の都 京都』で紹介してきましたが、今年は皮肉な状況です。
 食事どころではほとんどの人が気をつかっていますが、中には声高に話す人がいるのも事実。年末正月に向け、感染対策をしながら楽しみたいものです。