3月12日漱石 京都の春 

Posted by S.
3月12日 Posted by S.

桜も紅葉もないけど、素敵な京都を紹介したいと始まった暮らす旅舎の本づくり。ろおじ巡りや水辺の散策など「いつ行っても楽しい」京都ではありますが、桜の季節の魅力は、「宿の予約がとりにくく、名所はどこも大混雑」を差し引いてもあまりあります。

暖冬の今年の桜は例年よりもかなり早そうです。ソメイヨシノの満開も3月中だとか。じつは出町柳、長徳寺のおかめ桜などすでに開花という知らせもありました。

さて多少人出があっても広いからゆっくり花見散歩ができて、おすすめしたいのが鴨川の岸辺です。まずは四条大橋から北へ向かいましょう。

途中の御池大橋西詰には「春の川を隔てて男女哉」という夏目漱石の句碑があります。一見堅物そうな漱石の秘めた恋が伺える一句です。漱石は生涯で4回京都を旅しました。親友正岡子規との初めての京都に始まる体験は『虞美人草』の比叡登山や、『門』の主人公宗介の学生時代、随筆『京につける夕』などに生かされました。

なかでも4回目の京都は大正4年3月19日から4月16日まで。この旅で漱石は祇園の名妓磯田多佳女に出会い、北野天満宮へ行く約束を反故にされた漱石は川向うの多佳女へ色紙にしたためて送りました。しかしこの地で吐血して、妻の筆子が迎えに来ることになります。漱石が亡くなる1年半前の出来事でした。

なんて明治の桜に想いをはせつつ、さらに北へ。出町柳そばの鴨川デルタを過ぎれば、そこからは賀茂川。元気なら北大路から北山通間800メートルつづく「半井(なからぎ)の道」は、京都府立植物園沿いの枝垂れ桜の名所です。

暮らす旅舎では、次回作にむけてそろそろ始動開始です。これからもよろしくお願いします。